入選・大阪ガス(株)賞:深田彩心さん(名城大学 )

 地球温暖化の進行に伴い、脱炭素化は喫緊の課題として挙げられます。私は現在大学の卒業研究で業務用太陽熱利用給湯システムの性能評価分析と改善提案を行っており、その背景に当たる世界と日本における太陽熱利用の変遷を学びました。その中で世界の諸外国では太陽熱利用システムの開発が進み、太陽熱利用が大きく進んでいます。(図1)一方で日本はオイルショックを契機に急激に増加し、その後は減少の一途を辿っています。(図2)
 そこで業務用施設や産業用施設での太陽熱利用システムの活用が有効であると考えられます。再生可能エネルギーの活用が求められる未来において再び太陽熱利用の導入が進み、太陽エネルギーを電気と熱の両方で資源として活用していくべきです。
 図3からホテルはエネルギー使途別の消費内訳のうち熱源・給湯・蒸気が合わせて48%、病院では50%を占めていることが分かります。またスペイン・バルセロナにあるスポーツ施設においてはシャワー、プールの温度調節に太陽熱が利用されています。業務部門の建築物ではホテル・病院・スポーツ施設に導入すると有効に活用していけるのではないかと考えます。
 図4から企業・事務所他部門のエネルギー消費の推移では製造業が半数以上を占めていることが分かります。
 図5から製造業のエネルギー消費の推移は石油・石炭製品の消費量は減少しているが、依然として約半数を占めています。しかし再生可能・未活用エネルギーは2022年時点で1%に満たしていない状況です。
 長野県の食肉製品加工工場において手洗い、洗浄、作業場の清掃用、イタリア・バーリのビール醸造所において低温殺菌、フランス・イスダンの麦芽工場ではモルトの乾燥、水と空気での熱交換の工程で使用する温水熱源や空気の予熱として太陽熱を導入している事例があり、導入拡大が求められます。
 図6から製造業の業種別のエネルギー消費は化学が約4割を占めていることが分かります。今後、食品・飲料工場での活用を踏まえて化学製品工場の生産活動において前処理(加熱)、分離・精製(蒸留)、乾燥の工程で太陽熱が利用できるのではないかと考えます。


 日本においても世界のように太陽熱が業務部門、産業部門、住宅部門のそれぞれにおいて自然エネルギーの資源として活用され、2050年CN実現に向けて再生可能エネルギー熱利用がさらに進んでいく未来を望みます。

出典

図1 図2 環境エネルギー政策研究所(ISEP)編自然エネルギー白書2018/2019サマリー版,P.7 (JSR2018_2019Summary.pdf)
図3 環境省 ZEB PORTAL(ゼブ・ポータル)詳しい説明 建築物のエネルギー消費状況 関東経済産業局「中小企業の支援担当者向け省エネ導入ガイドブック」より環境省作成 https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/04.html
図4、図5、図6 エネルギー白書令和5年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2024)第2部 エネルギー動向 第2節 部門別エネルギー消費の動向第212-1-1,第212-1-5,第212-1-6
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2024/html/2-1-2.html
資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に資源エネルギー庁作成