ブックタイトル新太陽エネルギー利用ハンドブック

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新太陽エネルギー利用ハンドブック

第2章太陽電池技術の基礎2・1単結晶シリコン太陽電池2・1・1単結晶シリコン太陽電池の歴史太陽電池の動作原理である光起電力効果の発見は古く19世紀に遡るが,近代的な太陽電池は1954年に米国のベル研究所で発明された.単結晶シリコン基板にPN接合を形成した世界初の太陽電池の変換効率は6%であった.その後1958年にはNASAのバンガード衛星の電源に単結晶シリコン太陽電池が使用された.1959年には単結晶シリコン太陽電池の変換効率は10%に到達した.我が国では1963年にシャープが単結晶シリコン太陽電池を使用した商業用太陽電池モジュールを開発し,灯台や無線中継基地等の電源として使用された.その後も,単結晶シリコン基板をベースとする半導体産業の発展と相まって,太陽電池の開発と事業拡大は単結晶シリコン太陽電池が中心的な役割を担ってきた.1985年は単結晶シリコン太陽電池の変換効率の改善において重要な年で豪州のニューサウスウェールズ大学(UNSW)が20%を越す変換効率を,米国のスタンフォード大学は200倍集光で25%を越す変換効率を達成している.1998年にはUNSWによって単結晶シリコン太陽電池の最高効率24.7%が報告された(1).この記録は現在に至るまで13年間破られていない.単結晶シリコン太陽電池は市場占有率こそ安価な多結晶シリコン太陽電池に譲るが,今後の太陽電池の開発と事業分野において中心的な役割を担うことに変わりはない.ここでは商業用として採用されている単結晶シリコン太陽電池の技術をコスト削減の観点を踏まえて解説するとともに,最高効率の24.7%をブレークスルーする今後の新技術について展望する.2・1・2単結晶シリコン太陽電池の技術太陽電池の技術開発の目的は太陽電池モジュールコスト(W単価)を下げること,さらには発電システムのコスト(kWh単価)を下げることにある.他の条件が同じとすると,太陽電池の変換効率を上げることはシステム全体のコスト削減につながるので,最も重要な技術課題である.単結晶シリコン太陽電池は市販され図2・1・1PERLセル(The University of New South Wales)ている各種太陽電池の中で最も変換効率が高い.単結晶シリコン太陽電池の理論変換効率は,下記仮定の下に標準太陽光(25℃,1Sun, AM1.5 Global)条件下で約29%と計算されている(2).1.太陽光の反射損失は避けられる.理想的な光トラッビング構造による光吸収2.少数キャリア再結合は,SRH再結合および表面再結合は避けることができ,オージェ再結合のみ考慮3.電極の影損失(シャドウ損失)や直列抵抗を避けられる4.シリコン基板内での多数キャリアの移送損失は避けられる実際の太陽電池はこのような理想状態ではなく,1?4全ての項目に損失が発生する.理論計算上の理想セル,UNSWの最高効率のPERL (Passivatedemitter and rear locally diffused)セルの構造を図2・1・1に示す.PERLセルは20mm角の実験室セルであり,FZ(FloatZone)法による高ライフタイムP型シリコン基板,半導体級の接合形成・パッシベーションセルタイプサイズ(cm 2 )基板厚(μm)Voc(V)FFη(%)表2・1・1抵抗率(Ω・cm)Jsc(mA/cm 2 )単結晶シリコン太陽電池の特製比較理想セル(計算値)-80Intrinsic42.50.7650.89028.8(25℃,AM1.5 Global)PERLセル(測定値)44500.542.20.7020.82824.7商業用セル(平均値)2431602370.630.7818.2? 29 ?